「麹塵(きくじん)」、別名「青白橡(あおしろのつるばみ)」と言います。
今どきのお雛さまを並べていらっしゃるお店には「黄櫨染」と並んで必ずと言っていいほどの確率で並べられているのがこの「麹塵」です。
草色や緑色の衣装で「色が変わる」ことが一番の特徴であり「禁色(きんじき)」という天皇のみ着用を許される衣装でした。
またその衣装の色が変わるという神秘な姿から周りの人々からは驚きと同時に「神」の仕業にも見えたのかなぁと思ってしまいます。
そしてその色変わりは特に赤い色調の光に良く反応し、中でもカメラのフラッシュなどを当てると大きく変わり、カメラマン泣かせの生地でもあります。
そんな「麹塵」ですが、実は昭和50年代中頃まで染色家の一部や学術的に関わる方以外ほとんど知られることの無い生地でした。
それまでは文献で残っていたりはしましたが、現物は一部しか残っていなかったりしたため中々世には出てきません。
そんな「麹塵」を復活させようとしている方々が西陣にいらっしゃり、当時、その方たちと出会った先代の寿峰が、是非、「お雛さんの衣装にしたい」とお願いし生地を譲っていただくことができました。
そして、お作りしたのが男雛の衣装に「麹塵」を使う日本で最初の人形になりました。
以来、多くの「麹塵」をお作りさせていただくことになります。
いまでは「有職」のスタンダードになり、多くの織物屋さんでも様々な色柄で織られていますし、日本中の人形職人が腕によりをかけて作られています。
そんな「麹塵」に合わせる女びなにはしっかりしたお色の【唐花文様】の「唐衣」に男雛に共通の色目の【表衣】、かさねにはおとなしいグラデーションを合わせています。
いかがでしょうか?
さて、その「麹塵」復活には平安時代の浪漫が詰まった秘話があります。
そのお話は、またどこかでできたらと思います。
こちらをクリックいただきますとオンラインショップへ移動できます。