這子は白絹(羽二重や一越ちりめんなど)の四隅を縫い合わせて手足を作り、綿を詰めて頭を差し込んだ布製の人形です。 うつぶせにすると乳幼児が這い這いする姿に似ていることからこの名前がつきました。 平安朝以来、上流階級では「上巳の祓」に贈られた人形で乳幼児の守りとしてこれを枕元に飾り、祓いの後の神聖なものとして翌年にも用いられるようになり、幼子が3歳になるまで身に添えて持たせるなど病気や災厄が大切なわが子にとりつかないよう祓いの形代(かたしろ)としました。 感触が柔らかいため、次第に手遊び人形として子どもたちに親しまれるようになります。 いわゆる「縫いぐるみ」の元祖です。 やがて民間にも復旧し、飛騨高山の猿ぼぼや、庚申信仰と結びついて生まれた手足を括った姿の「括り猿」にその名残をみる程度となっております。 現代も身近に置いて愛情を注ぐ縫いぐるみのルーツが、日本では自分の災厄を祓い、身を守ってくれる形代でありました。 この人形も江戸時代の中頃にはその役割が「雛人形」に替わることとなり次第に消えていきました。 現在では飛騨高山の「猿ぼぼ」や祇園の「くくり猿」にその名残を見る程度となっています。