有職(ゆうそく)

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暖かくなったと思ったらまた寒くなったり・・・
体調が崩れやすいこの時期、インフルエンザも流行っているようなので、皆様お体にはお気を付けてお過ごしください。
昨日は節分でしたね。
豆まきをしたり恵方巻を食べたりした方も多いと思いますが、昔から続いている伝統行事=遥か昔から、この時期は体調が悪くなったりしやすかったということですよね!?豆をまいて疫病などをもたらす厄(鬼)を追い払い、恵方巻を食べて福を巻き込む。改めて考えると、なんだか驚いてしましました。
昔から続けられてきた日本の伝統行事、大切にしていきたいですね。
さてさて、伝統行事といえば、ご存じおひなさんもその代表的な一例でして・・・(*ノノ)キャ
今回はおひなさんのお衣装によく使用される、伝統的な柄について書きたいと思います。
おひなさんについて見たり調べたりしていると、「有職(ゆうそく)」という言葉をよく目にされるかと思います。この「有職」とは、「有職故実(ゆうそくこじつ)」という言葉から来ておりまして、平たく言うと朝廷や公家の様々なこと、例えばこの季節にはこんな行事をして、その時の食事はこれ、衣装はこれ、などといった、貴族生活の規則みたいなものです。
その中で、貴族が身に着ける衣装や装身具、調度品についても定められており、それらに用いられた模様のことを「有職文様(ゆうそくもんよう)」と言います。
その文様は、かつて遣唐使により中国から伝わったものをデフォルメしたりアレンジして独自にデザインされ、日本固有の柄となりました。
有職文様にはいくつもパターンがありますが、共通しているのは「柄に終わりがない」です。
貴族たちの繁栄がこのまま終わりませんように・・・という願いが込められているため、無限マーク∞のように絶えず同柄が続いています。
そんな有職文様の衣装を着せ付けたおひなさんがいわゆる「有職びな」なのです。
ここでちょっと有職文様をご紹介・・・
トップの画像、上部は「小葵文(こあおいもん)に浮線綾(ふせんりょう)」。小葵=ゼニアオイの葉をかたどった地模様の上に花をデフォルメした丸い模様を重ねています。ゼニアオイは繁殖力がとても強いので、そこに自分たちも益々発展するようにとの願いが込められています。小葵文は天皇の日常着に使用されるなど、高貴な柄です。
下部は、「雲立涌(くもたてわく)に向鶴(むかいつる)」。立涌(たてわく/たちわき)という∞マークのような波線の間に雲が入っています。立涌とは蒸気が立ち上る様を表現しており、位が高い身分の貴族しか使用することができなかった柄です。上から向かい合った鶴2羽が重なります。鶴は昔も今も縁起がいい柄ですね。長寿を願っています。
                
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上部は「亀甲花菱文(きっこうはなびしもん)に向蝶(むかいちょう)」。亀甲は均整の取れた六角形の幾何学的な美しさと、亀のもつ長寿という意味が合わさっています。中の花菱は装飾と思われます。そして更に蝶を重ね、美しい仕上がりです。蝶は現代でも幸せを運ぶ象徴と言われたりします。キリスト教では復活の意味があるとか・・その舞う姿がとても美しいので、女房(宮中で働く貴族出身の女性)のお衣装によく使用されました。
下部は、「桜立涌(さくらたてわく)に鸚鵡文(おうむもん)」。立涌の中に桜があしらわれています。重ねている鸚鵡は、もともと外来種なので日本にはいませんでしたが、正倉院の宝物にもあることから、非常に古くから存在する文様です。奈良時代に唐から入ってきた柄で、その唐はペルシャの影響を受けています。鳥は蝶と同じく幸せを運ぶ象徴なので、平安時代にも重用されました。
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そしてこちらが「藤立涌(ふじたてわく)に向鳳凰文(むかいほうおうもん)」。たびたび登場の立涌に、これは藤の花が絡まっておりとても優美です。藤は古くから日本に自生しており、美しく房状に咲く姿は、観賞用としてとても親しまれていました。また、藤原氏一門が栄華を極めたことで、平安時代後期から文様に広く取り入れられるようになりました。
鳳凰は現在も大変縁起のよい柄として有名ですが、もともとは中国の伝説上の鳥です。徳の高い君子が帝の座に就くと現れて鳴く、という伝説です。そのため、大変高貴な柄です。
まだまだ有職文様にはたくさんの種類があり、ここでご紹介しきれないのが残念です。。
でもこれをきっかけに、有職文様の種類と意味もおひなさんを選ぶときのご参考になれば幸いです。
昔から続く伝統には、必ず意味があるものですね。
今回このブログを書きながら改めて感じました。
そして、その伝統を守り、伝えていくこともとても大切なことなんだと心から思います。
先日お亡くなりになられた市川團十郎さんが海老蔵さんに伝えた言葉が、強く心に響き印象に残っています。
「(海老蔵さんに対して)お前の工夫をしたらいいよ。でも、間違っちゃいけないよ。」
おひなさんのような伝統行事にも、この言葉は当てはまると思います。
その時代に合ったご提案、ご要望に沿ったご提案をしつつも、本筋は間違ってはいけないんだな・・・と。
おひなさんでいう本筋とは、つまり贈られるご両親やご祖父母の方々がどんな思いで贈るかということです。
その思いを基本として、これからも笑顔になってもらえるようなおひなさんを作っていきたいと思います。